「税理士と公認会計士の違いって何?」「弁護士・社労士・行政書士など、お金に絡む専門家が多すぎて混乱する」――こう感じたことはありませんか。

事業を運営していると、税務・会計・法務・労務・登記など複数の専門領域に直面します。日本では士業ごとに独占業務が法律で定められているため、どの専門家にどの業務を頼むかを誤ると、コスト増・対応遅れ・法的リスクにつながります。

例えば「会社設立を税理士に頼んだら登記はやってもらえないので結局司法書士にも別途依頼が必要だった」「就業規則を税理士に頼んだら『それは社労士の仕事』と断られた」――こうした行き違いは、士業の役割を理解していないと頻繁に起きます。

本記事では、税理士と関連士業の違いを以下の順で整理します。

  • 6つの士業の役割と独占業務
  • 「どんなときに誰に頼むか」具体ケース別一覧
  • 費用相場と依頼方法の違い
  • ダブルライセンス事務所の活用
  • 連携が必要な代表的なケース
  • 士業選びでよくある誤解

読み終わる頃には、自分の課題に対して最適な専門家を一発で選べる状態になっているはずです。


6つの士業の役割と独占業務

事業オーナーが関わる代表的な6士業を整理します。

1. 税理士

独占業務(税理士法第2条)

  • 税務代理(税務署対応の代行)
  • 税務書類の作成(代理署名・捺印)
  • 税務相談(有償の場合)

得意領域

  • 税務全般
  • 確定申告・決算申告
  • 相続税申告
  • 税務調査対応
  • 節税スキーム設計
  • 会計・経理体制構築

報酬目安

  • 月3万円〜(顧問契約)
  • 確定申告5万円〜
  • 相続申告30万円〜

特徴:事業者が最も頻繁に頼む士業。月次・年次でほぼ全ての企業が関わる。

2. 公認会計士

独占業務(公認会計士法第2条)

  • 法定監査(上場会社・大企業の決算監査)

得意領域

  • 会計監査
  • IPO支援
  • 内部統制構築
  • M&A財務デューデリ
  • IFRS(国際会計基準)対応

報酬目安

  • 監査契約年数百万円〜数千万円
  • IPO支援数千万円〜
  • M&Aデューデリ百万円〜

特徴:公認会計士は税理士登録すれば税理士業務もできる。実務的には公認会計士と税理士が同じ事務所に在籍する形態が多い。中小企業向けの月次顧問業務は税理士の独壇場、上場会社の監査は公認会計士の独占業務、と棲み分けされている。

3. 弁護士

独占業務(弁護士法第72条)

  • 訴訟代理
  • 和解の代理
  • 契約書作成(業務として行う場合)
  • 法律相談(有償の場合)

得意領域

  • 訴訟・紛争解決
  • 契約交渉・契約書作成
  • コンプライアンス
  • M&Aリーガル
  • 労働紛争
  • 知的財産

報酬目安

  • 相談1時間1万円〜
  • 訴訟着手金20万円〜+成功報酬
  • 顧問契約月5〜10万円〜

特徴:弁護士は全ての法律業務を扱える(独占業務が広い)ため、税務・登記なども理論上は可能。ただし実務的には各専門分野の士業のほうが詳しい。

4. 司法書士

独占業務(司法書士法第3条)

  • 登記申請(不動産登記・商業登記)
  • 簡裁訴訟代理(認定司法書士のみ)

得意領域

  • 会社設立登記
  • 本店移転・役員変更登記
  • 不動産売買登記
  • 相続登記
  • 抵当権設定・抹消

報酬目安

  • 会社設立5万〜10万円
  • 不動産登記5万〜15万円
  • 相続登記5万〜15万円

特徴:登記は司法書士の独占業務。税理士事務所が会社設立をサポートしても、登記申請は提携司法書士が行う形が一般的。

5. 行政書士

独占業務(行政書士法第1条の2)

  • 官公庁に提出する書類の作成(許認可申請等)

得意領域

  • 建設業許可
  • 産業廃棄物処理業許可
  • 古物商許可
  • 外国人ビザ申請
  • 車庫証明
  • 各種補助金申請

報酬目安

  • 建設業許可12万〜20万円
  • ビザ申請5万〜30万円
  • 補助金申請成功報酬10〜20%

特徴:許認可業務の専門家。業種ごとに必要な許可が違うため、自社業種に詳しい行政書士を選ぶのが定石。

6. 社会保険労務士(社労士)

独占業務(社会保険労務士法第2条)

  • 労働社会保険諸法令に基づく書類作成・提出代行
  • 就業規則作成
  • 賃金台帳・労働者名簿の作成

得意領域

  • 社会保険手続(健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険)
  • 給与計算
  • 就業規則作成
  • 労務トラブル対応
  • 助成金申請
  • 働き方改革対応

報酬目安

  • 給与計算月1万円〜(10名以下)
  • 就業規則作成20万〜50万円
  • 助成金成功報酬20〜30%

特徴:従業員を雇う段階で必要になる士業。1人法人でも社会保険手続きで関わる。

番外:中小企業診断士

独占業務:なし(コンサルティング業)

得意領域

  • 経営戦略
  • 補助金申請(事業再構築補助金・ものづくり補助金など)
  • 事業計画書作成
  • 業務改善
  • マーケティング

報酬目安

  • 補助金支援成功報酬10〜20%
  • 経営コンサル月5万〜20万円

特徴:独占業務はないが、経営全般のアドバイザーとして活用される。


「どんなときに誰に頼むか」具体ケース別一覧

代表的な業務 → 最適な専門家を表にしました。

業務・課題 第一選択 第二選択・補助
確定申告(個人) 税理士
法人決算・税務申告 税理士
相続税申告 税理士(相続専門) 司法書士(相続登記)
税務調査対応 税理士
会社設立 税理士+司法書士(連携) 行政書士(特定業種の許可)
法人登記(役員変更・本店移転) 司法書士
不動産売買 司法書士(登記) 税理士(譲渡所得税)
建設業許可 行政書士
産業廃棄物処理業許可 行政書士
古物商許可 行政書士
外国人ビザ 行政書士 弁護士(複雑案件)
給与計算 社労士 or 税理士
就業規則作成 社労士 弁護士(紛争予防の観点で)
社会保険手続 社労士
助成金申請 社労士 中小企業診断士
労務トラブル対応 社労士+弁護士
契約書作成・レビュー 弁護士 行政書士(軽微なもの)
訴訟・裁判 弁護士
損害賠償交渉 弁護士
知的財産(特許等) 弁理士 弁護士
M&A 弁護士+税理士 公認会計士(規模次第)
IPO準備 税理士法人+監査法人+弁護士
補助金申請 中小企業診断士 行政書士・税理士
業務改善・経営コンサル 中小企業診断士 税理士
事業計画書作成 中小企業診断士 税理士

**ざっくり覚えるなら、「税務 = 税理士、登記 = 司法書士、許可 = 行政書士、労務 = 社労士、法律 = 弁護士」**が大原則です。

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費用相場と依頼方法の違い

単発業務の費用目安

業務 費用目安 期間
確定申告(個人事業主) 5万〜25万円 1〜2か月
法人決算(中小企業) 20万〜50万円 1〜2か月
相続税申告 30万円〜(遺産総額の0.5〜1.0%) 3〜10か月
会社設立 設立費用込み15万〜30万円 2〜3週間
役員変更登記 3万〜5万円 1〜2週間
建設業許可(新規) 12万〜20万円 1〜2か月
就業規則作成 20万〜50万円 1〜3か月
給与計算(月) 1万〜3万円(10名以下) 月次継続
契約書レビュー(簡易) 3万〜10万円 1〜2週間
訴訟(着手金) 20万円〜(請求額次第) 数か月〜数年
補助金申請(中小企業診断士) 20万円〜+成功報酬 2〜4か月

顧問契約の月額目安

士業 月額顧問料 主な内容
税理士 3万〜10万円 月次経理・節税相談・決算
弁護士 5万〜10万円 法律相談・契約書レビュー
社労士 2万〜5万円 給与計算・社会保険手続き
司法書士 顧問契約は稀 案件ベース
行政書士 顧問契約は稀 案件ベース
中小企業診断士 月5万〜20万円 経営コンサル

中小企業オーナーは「税理士顧問 + 必要時に弁護士・社労士・司法書士をスポット」がコストバランス良い体制。年商規模・従業員数が増えてきたら社労士顧問も追加するイメージ。

各士業の総コスト比較例

従業員10名・年商3億円の中小企業の場合の標準的な士業費用:

士業 年間費用目安
税理士(月次顧問) 60〜100万円
社労士(給与計算+月次) 20〜40万円
司法書士(年1〜2回スポット) 5〜10万円
弁護士(必要時スポット) 0〜30万円
合計 85〜180万円

中堅企業になるとこの2〜3倍、大企業はさらに2〜3倍と増えていきます。

料金相場の全体感は税理士の顧問料・報酬相場ガイドを参照してください。


ダブルライセンス事務所の活用

「税理士法人〇〇」「〇〇司法書士・行政書士事務所」など、複数資格を持つ専門家・連携事務所もあります。

代表的なダブルライセンス組み合わせ

  • 税理士+公認会計士:監査と税務を一手に対応、IPO・M&Aに強い
  • 税理士+司法書士:会社設立・相続を一括対応、家族信託も
  • 税理士+行政書士:建設業・農業など許認可業種の総合対応
  • 税理士+中小企業診断士:節税+経営コンサル
  • 弁護士+税理士:M&A・事業承継・税務訴訟の高度案件
  • 社労士+行政書士:人事労務系の総合事務所
  • 司法書士+行政書士:会社設立・許認可ワンストップ

メリット

  • 窓口が1つで効率的:複数事務所の調整が不要
  • 業務範囲をまたぐ案件で連携コスト削減
  • 専門家間の引継ぎミスがない
  • 総合的な視点でアドバイスを得られる

デメリット

  • 各分野の専門性が「広く浅く」になりがち
  • 単独事務所より料金が高めの傾向
  • 大規模案件では各分野の専門事務所に劣る

使い分けの目安

事業規模 おすすめ体制
個人事業主・小規模法人 ダブルライセンス事務所で十分(コスト&効率重視)
中堅企業 主軸は専門事務所、補助でダブルライセンス活用
大企業 各分野の最高峰の専門事務所に分散

連携が必要な代表的なケース

複数の士業の連携が必要な代表ケースを5つ紹介します。

1. 会社設立

複数の士業が並行して関与する典型シーン:

  • 税理士:節税スキーム設計(資本金・決算月・役員報酬)、設立後の税務
  • 司法書士:法人登記
  • 行政書士:建設業・宅建業など許可が必要な業種の許可申請
  • 社労士:社会保険手続き(従業員雇用時)

→ 多くの場合、税理士が窓口になって司法書士・行政書士と連携。詳細は会社設立に強い税理士の選び方参照。

2. 相続

  • 税理士:相続税申告(相続専門事務所)
  • 司法書士:不動産・株式の名義変更登記
  • 弁護士:相続人間の紛争対応(必要時)

→ 相続税理士が司法書士・弁護士と連携することが多い。複雑な相続では、税理士・司法書士・弁護士の3者がチームを組む。詳細は相続税の税理士の選び方参照。

3. 事業承継・M&A

  • 税理士:株価評価、税務スキーム
  • 弁護士:契約書、デューデリ法務
  • 公認会計士:財務デューデリ(規模次第)
  • 司法書士:株式移転登記
  • 中小企業診断士:事業承継計画

→ 大型案件は複数の専門家でプロジェクトチームを組む。

4. 労務トラブル

  • 社労士:労働法上の手続、就業規則の改定
  • 弁護士:訴訟対応、和解交渉
  • 税理士:退職金スキーム、税務影響

→ 労務トラブルは早期に弁護士の関与が望ましい。社労士だけでは法廷代理ができない。

5. IPO準備

  • 税理士法人(大手):税務、内部統制
  • 監査法人:会計監査
  • 弁護士:上場関連法務
  • 主幹事証券会社:上場準備全般
  • 司法書士:株式分割・新株発行登記

→ N-3期〜N期で複数の専門家が同時並走。詳細はスタートアップ・IPO準備に強い税理士の選び方参照。


士業選びでよくある誤解

誤解1:「税理士はみんな同じ」

実際は業種・規模・専門領域で大きく違います。法人税中心の税理士と相続税中心の税理士では、対応できる案件が全く違います。

誤解2:「税理士が法律も労務も全部やってくれる」

税理士の独占業務は税務のみ。労務は社労士、法律は弁護士の独占領域。範囲を超えて対応すると士業法違反になる可能性。

誤解3:「公認会計士のほうが税理士より格上」

業務領域が違うだけで格上格下はありません。中小企業の税務は税理士が、上場会社の監査は公認会計士が、それぞれ独占的にやる構造。

誤解4:「弁護士に全部頼めばOK」

弁護士は法律業務全般を扱えますが、税務・登記・労務の専門性は各士業に劣ることが多い。さらに料金も高い。

誤解5:「行政書士に税務を頼める」

行政書士は税務代理ができません。「税務関連書類の作成」は行政書士の業務範囲外。税務は税理士にしか頼めない。

誤解6:「無資格コンサルでも経営アドバイスはOK」

経営コンサル自体は資格不要ですが、税務相談・法律相談を有償で行うのは無資格者は違法。「節税コンサル」を謳う無資格者は要注意。

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よくある質問

Q1. 税理士と公認会計士、どちらに頼むべき?

A. 中小企業の税務は税理士。公認会計士は上場会社・大企業の法定監査がメイン業務。ただし公認会計士が税理士登録している場合は税務も対応可能。

「税理士法人 ◯◯(うち税理士5名・公認会計士3名)」のような事務所が中堅企業向けに多い。

Q2. 弁護士に税務相談しても大丈夫?

A. 弁護士は税務相談も可能(弁護士法の業務範囲に含まれる)が、実務的には税理士のほうが詳しいケースが多い。税務訴訟は弁護士+税理士のタッグが標準。

純粋な節税相談なら税理士、税務訴訟なら弁護士+税理士、と使い分け。

Q3. 司法書士に登記以外の相談をしてもいい?

A. 登記に絡む範囲(相続・会社設立等)の付随相談は可能。ただし税務・労務・法律相談は他士業の独占業務

「会社設立のために登記の話を聞きに行ったら、税務についても少し相談に乗ってもらった」程度は実務上OKですが、本格的な税務相談は税理士に。

Q4. 個人事業主は税理士以外の士業も必要ですか?

A. 通常は税理士で十分。

  • 訴訟リスクがある時に弁護士
  • 従業員雇用時に社労士
  • 法人成り時に司法書士

事業フェーズに応じて他士業を追加。

Q5. 全部一人に頼める「総合事務所」はありますか?

A. ダブル・トリプルライセンスの事務所は存在しますが、各分野の専門性は専門事務所に劣る場合あり。

規模に応じた使い分けが現実的:

  • 小規模事業者:ダブルライセンスでワンストップ
  • 中堅以上:分野ごとに専門事務所

Q6. 士業ごとに別事務所だと連絡が面倒です。

A. 顧問税理士が「ハブ」になって他士業と連携してくれるケースが多い。税理士事務所には提携司法書士・行政書士・社労士・弁護士がいるのが一般的。

例:会社設立時、税理士に依頼すれば、司法書士の登記もまとめて手配してくれる。

Q7. 士業の費用は経費にできますか?

A. はい、事業関連の士業費用は経費計上可能。勘定科目は「支払手数料」「顧問料」など。

実質負担は所得税率分軽減されるので、忘れずに領収書を保管してください。


まとめ

士業の使い分けは「業務の独占業務マップ」で覚えるのが最短です。

ポイント:

  • 税務 = 税理士、登記 = 司法書士、許可 = 行政書士、労務 = 社労士、法律 = 弁護士
  • 中小企業オーナーは税理士顧問 + 必要時にスポットでコスト最適
  • 大型案件・特殊案件は複数士業の連携で進める
  • ダブルライセンス事務所は小規模事業者に効率的
  • 顧問税理士をハブにして他士業と連携するのが現実的

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